artwork: Philippe Weisbecker

生きた小宇宙 盆栽の世界|山田香織 盆栽家|JAPON interview 2

日本をテーマにお話をうかがうmammoth “JAPON” インタビュー。第2回は、江戸嘉永年間創業という老舗盆栽園「清香園」の五代目、彩花盆栽家元の山田香織さんです。
– 盆栽園の一人娘として、盆栽に囲まれて育ちましたが、学生時代は家業を継ぐのが嫌でした。ですが、18歳で両親とフランス旅行に行ったときに「私が日本人であること」を痛感させられ、考えかたが変わったのです
フランスは美しい公園や料理、街の配色などもすばらしかったのですが、同時に異質なものを感じたのです。この美しさを自分の感覚でカバーできるのだろうかと。私が留学してフラワーデザインを学んだとしても、その風景が身体に染みついた彼らには適わない、反対にフランスの方が盆栽の世界に入ったとしても同じだと。
春夏秋冬があり湿度の高い気候風土で、淡い色味、繊細な味を感じる。日本人であると自覚すると同時に、このような日本文化の一端を担う盆栽園に生まれた自分を誇りに思え、この感覚を大事にしようと思ったのです。
盆栽は日本の原風景を模して小さな鉢の上で表現する遊びです。実際の原風景を知らないと、作品の表現ができません。なので、できるだけ名勝地に足を運び、その土地の植物の生えかたや周囲の風景を自分の目と心に刻みこむようにしています。また、毎日盆栽に触れていると、自然と植物から季節や日本の色を教えてもらえるのです。
子どもたちにも本物の風景を見て、触って感じる体験をしてほしい。そのときは気づかなくても、きっと五感で体験したことは心に刻まれます。大きくなって世界に出ていったときにすばらしい日本の文化をもって、さらに輝いてもらいたいと思います。-
山田香織 やまだ・かおり 
1978年、埼玉県生まれ。創業江戸嘉永年間、170年におよぶ歴史をもつ老舗盆栽園「清香園」五代目、彩花流盆栽家元。大学在学中の1999年に「彩花盆栽教室」を立ち上げ、盆栽を通じて多方面にて活躍。
※このインタビューは mammoth No.25「JAPON」特集に掲載されています。Text: Keiko Kamijo