物語を体のなかに入れれば、人生はファンタジーになる|井村君江|うつのみや妖精ミュージアム名誉館長 明星大学名誉教授

ファンタジーはもうひとつの世界。ファンタジーの世界をもっていれば、人生が豊かになります。小さいころ、寝る前に叔父がグリム童話やアンデルセンの物語を読んでくれました。毎晩でしたので、小学校4年ぐらいのときには、お話しを暗唱して、クラスのみんなに聞かせていたくらい。何回も繰り返して聞かされ自分でも読み返していたので、物語が体のなかに入り込んでいたのですね。
その後、妖精を研究するわけですが、妖精の世界やファンタジーのお話は、あちらのものではなく、体のなかにありました。暗記はよくないっていう人がいますが、知識がなければ思考を発展させることもできないと思います。
もちろん知識だけでなく、体験も必要ですね。私が住んでいた旧家には、蔵がありました。蔵って暗く、鬼が棲んでいる怖いところと信じていました。また一方で目を庭の方に向けると、そこにはバラが咲き生命に満ちあふれている。明るくて心地よい庭は好きだけれど、暗くて怖い蔵は嫌な感じ、このように、ファンタジーという言葉を知るより前の小さいころから、本能的に目に見えない世界を、感じていました。
妖精は自然のなかにあるスピリットがさまざまの形で現れるわけですね。妖精が現れる時間を、シェイクスピアは入相の鐘、晩鐘のなるころから、一番鶏がなくまでとし、ルイス・キャロルは、影がなくなり眠気のする正午にしています。ここが、ファンタジーの世界への入り口かも知れませんね。
井村君江 (いむら きみえ)
1932年生まれ。日本における妖精学の第一人者。明星大学名誉教授。うつのみや妖精ミュージアム名誉館長。著書『ケルト妖精学』、訳書『アーサー王物語』、『神秘の薔薇』、『新訳テンペスト』他多数。
» mammoth No.33 Fantasy Issue | 君の、ファンタジーの扉を開こう!