ヨーロッパにはいない不思議な存在、妖怪|シャルル・フレジェ|写真家

私が住んでいるフランスのルーアンという街には大聖堂があり、その大きな扉のひとつは「Le portail des libraires」(異世界への図書館)という名前で呼ばれています。扉のまわりには、ヨーロッパの神話や寓話のモンスターたちの装飾が描かれています。私はその扉が好きでよく眺めているのですが、見るたびに新しい生きものを見つけるのでとてもおもしろいです。
私は“肖像”をテーマに写真作品を制作していますが、いくつかのシリーズを撮影した後、もっと根源的で本質的なものを撮影したいと思い、ヨーロッパの祭りに登場する獣人たちを撮った『WILDER MANN』を作成し、その後、日本各地の仮面神や鬼たちを撮影した「YÔKAÏNOSHIMA」を発表しました。ヨーロッパの寓話にも、幽霊やモンスター、巨大な生物などは登場しますが、日本の妖怪はとても複雑なキャラクターで多様な外見をしています。今回撮影してみて考えたのは、妖怪は日本人の想像から生まれてきたものなのではないかということです。奇妙な世界に棲む生きものとして語り継がれている妖怪をとおして、日本の考えかたを探るつもりでした。「YÔKAÏNOSHIMA」は、そうした空想の産物でもあります。
小さなころ、昔話やおとぎ話が大好きでした。でも、テレビもよく見ていたので、アニメや漫画に登場する奇妙なモンスターやスーパーヒーローも、日常の一部となっています。そうした空想の生きものたちは、私たちの成長や、社会で進むべき道を見つける手助けになっているのではないかと思います。
シャルル・フレジェ
1975年、フランス・ブールジュ生まれ。ルーアン在住。写真家として、初期より一貫して肖像写真を撮り続けている。近年のおもな個展に『WILDERMANN』、『BRETONNES』など。
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