日本人独特の文化的習慣「居眠り」を考察する|日本学研究者・ブリギッテ・シテーガ

「居眠り」は「居ながらにして眠る」。生理学的には同じ「眠り」でも、社会学的には夜の就寝や昼寝とはまったく質が違うんです。欧米人は、日本人のように人前で寝ることはあまりしません。治安のよさも関係はあるでしょうが、それとは別に、文化的な意味で「居眠り」は日本人独特の行為だと思います。
居眠りは公に許されているわけではないけれど、黙認はされますよね。けしからんと思われたり、疲れているのね、お気の毒にと思われたり、居眠りする人の社会的地位や状況によって解釈が変わりますが。それから、問題を回避するためのツールとして居眠りが使われることもあります。「狸寝入り」という言葉もあるように、それで相手との距離を確保する。電車のなかで日常的に見られる光景です。
東日本大震災の際、避難所での共同生活は、みなさん我慢やストレスをもちろん抱えていたはずですが、もし欧米だったらあんなにうまくいっていなかったと思います。居眠りや添い寝で安心感を覚えてきた日本人だからこそ、みんなと一緒にいるとよく眠れると感じました。でもそれは本来、人間として自然なことだとも思うんですけれど。
人生に居眠りをうまく取り入れるのはいい方法だと思います。疲れをとったり気分転換したりしながら、規則正しい生活を送るのを可能にしますから。睡眠を犠牲にすることは企業や社会にとって、ある意味では必要です。しかし当然、元気でいることが肝要ですから、私たちは各々、自分の眠りに責任があるんです。
ブリギッテ・シテーガ
1965年、オーストリア生まれ。ウィーン大学日本学研究所にて睡眠に関する研究で博士号取得。その博士論文でオーストリア銀行賞を受賞。著書に『世界が認めたニッポンの居眠り』など。
 
mammoth No.31 SLEEP Issue 収録