常に家族の気配があるつながりを感じる家|建築家 伊東豊雄

常に家族の気配があるつながりを感じる家 – 家をテーマに、インタビューしている本誌『mammoth』HOUSE 特集。さまざまな分野の人たちの言葉をきっかけに、親子で家について考えてみてはいかがでしょう。1人目は、建築家の伊東豊雄さんです。
– 長野県の田舎、諏訪湖のほとりにあった古い民家。昔ながらの土間や縁側があり、敷地内には蔵がある。私が「家」を最初に意識したときの記憶です。
それからさまざまな家に住んできましたが、私が居心地いいなと思うのは「内と外が連続している家」です。東南アジアのように、半屋外の空間でみんながご飯を食べたりお茶を飲んだりするような家への憧れがあるのかもしれません。現代の家はリビング、ダイニングと、機能によって部屋が分割されていますが、そうではなく、昔の日本家屋のようにふすまを外せばワンルームになるような、フレキシブルな使いかたができる家がいいなと思います。
とくに子どもがいる家は、小さくても狭くてもよいので、家族といつでも顔を合わせることができる家がいいですね。私が自分でデザインしたかつての自邸「シルバーハット」もそう。つねに家族のことを空気で感じられる家でした。
2011年、NPO「これからの建築を考える」を立ち上げようとした矢先に東日本大震災が起き、よりいっそう「誰のために、なんのために建築をつくるのか」を考えねばならないと感じています。
西洋の価値観に基づく近代主義、機能主義的な時代は終わりを告げています。これからはかつての日本家屋のように、自然とつながり、よりフレキシブルで自由な使いかたのできる家になっていくと思います。そこには人と人との心がつながる開かれた空間があり、そうした家は自ずから都市のなかというより地域のなかに増えていくと思います。
伊東豊雄 いとう・とよお
1941年生まれ。1965年、東京大学工学部建築学科卒業。おもな作品は「せんだいメディアテーク」など。ヴェネチア・ビエンナーレ金獅子賞、プリツカー建築賞など受賞。2011年に私塾「伊東建築塾」を設立。 http://itojuku.or.jp/
» mammoth No.30 HOUSE Issue