自然と寄り添う身体の本当の意味|mammoth 暦特集インタビュー・松田恵美子さん

「暦」をテーマにしたmammoth “Calendar”特集のショートインタビュー。第2回は、身体感覚教育研究者の松田恵美子さんにお話を伺いました。
-自然と寄り添う身体の本当の意味-
気の身体を扱っていると、いちばん大事なのはやはりバランスだと感じます。新暦も旧暦も、どちらをも生活のなかでの物差しとして活かせれば、私たちの身体はもっと自然の力を取り戻せるようになると思います。片方だけを偏重してしまう傾向があるのはもったいないと思うのです。
自然界の変化は徐々に起こります。ある日突然、秋が来るのではなく、まず朝夕に涼しい風が吹きだしてから、空が少しずつ高くなっていく。人の身体のペースもそれに似ています。少しずつ重なりあいながら、その人なりのペースで変わっていく。スイッチを入れたらポンと動きが変わるようなロボットではないのです。揺れ幅の時間を焦らないで待っているときにこそ、身体の内側では、その人なりの変化適応が無意識レベルでおこなわれていると思います。
とくに環境の変化が著しい昨今、この変化にどう適応していくのか。それは頭で考えるより先に、すでに身体のほうが対応を始めているのかもしれません。古代から大事にされてきたおおいなる根源的なエネルギーが、私たち一人ひとりの身体にも本来は秘められているはず。それに気づくためにも、頭で考えることをいったん外し、身体が存在の感覚に戻ることを許す。そんな柔軟な冷静さが、これからはとくに欲しいものです。無意識層レベルを含む、宇宙レベルの大きな捉えかたで自分の身体とつきあっていく。いまはきっと、そういう時代になったんだと思います。
松田恵美子 まつだ・えみこ
日々の動作や日本文化における型などを感覚からひもとき日常生活に活かせる知恵や技として活用することで、自分の身体を自分で育む姿勢を指導。『「気」と仲よくなる方法』(くらすことウェブマガジン)連載中。
mammoth No.27「CALENDAR」(2013年9月15日発行)収録