ART WORK: MEJUNJE

もっと自然に、もっと人に近くなる家|手塚貴晴+由比(建築家)

将来、テクノロジーが進歩していくと、昭和の日本にあったような懐かしい、人間らしい生活が取り戻せるのではないかと思っています。
1960年代は古き良き時代といわれていますが、窓の外は光化学スモッグや排気ガスがひどくて、とても窓を開けられたもんじゃなかった。しかし、いまは電気自動車が開発されたように、技術が進歩している。外の空気がキレイになれば、みんなが窓を開けるようになり、空調が要らなくなる。外が快適だと自転車に乗るようになったり、木々に親しむようになる。
現在の家は高気密高断熱が主流なんですが、あれは大きな間違い。外部環境と遮断した壁で覆い、シックハウスになるからといって24時間空気清浄機を稼働させる。おかしいですよね。窓を開ければいいじゃないですか。
なぜ、そのようなおかしい考え方が起きるかというと、当たり前のことを当たり前と感じる心が日本人の間で失われつつあるから。社会はどうあるべきなんだろうと考えて、心を取り戻すことが大事。最近は、みなさんも気づきはじめているようです。
私たちが考える未来の家は「外に向かって開いている家」。軒先が伸びて、縁側に人が座り、道を行き交う人と話ができるような。昔の日本家屋の風通しのよさを活かしながら、未来のテクノロジーを駆使して、都合がいいときに外部環境を取りこめる。人が街に近く、街が人に近く、人が自然に近くなる。そう考えると、未来の家は、いまよりももっとおもしろくなるんです。
手塚貴晴+由比 てづかたかはる+ゆい 
「建て主の“夢”を引き出し、形にするのが建築家の役割」を信条に、住宅から商業施設まで幅広く手がけている。外部環境と一体化した空間設計を得意とする。代表作に「ふじようちえん」(東京・立川市)など。
マンモス 21号 「IMAGINE THE FUTURE どんな未来を想像する?」(2011年9月発行) インタビューより
Text: Keiko Kamijo