責任ある消費が世界を変える|サフィア・ミニー(ピープル・ツリー/グローバル・ヴィレッジ代表)

「なにげなく手にするものが、世界の誰かの貧困の原因となったり、健康を害するものだったら。そんな想像力を身につけることが平和への一歩につながると思います」。途上国の生産者とともに商品を開発し、それを適正な価格で消費者に届ける「フェアトレード」。サフィア・ミニーさんは、フェアトレードを日本に広めた第一人者です。
一日十六時間以上もミシンを踏んでも、月給は二千円あまり。綿花の栽培に大量の農薬を使うことで、土や水が汚染される__サフィアさんは、先進国の消費を支えるための負の現実をアジア各国で見てきました。「私たちはものを使いすぎます。環境も悪化するいま、資源が枯渇すれば住む場所すら追われる人々も出てきます。ひとりひとりが責任をもち高い意識をもって行動しなければ、世界に平和はやってきません」。
「平和」とはつねに進行形で、個人の行動が経済や社会に反映される、というのがサフィアさんの考え。「子どもたちには私自身が模範になって、つつましく無駄のない生活するよう、いつも心がけています」。
─ Q1. いまの日本は平和だと思いますか?
平和です。生活や仕事の場でチームやコミュニティの意識が強く、謙虚でもあります。ただ日本人は平和な関係を保ちたいために、自分の立場を表明したり目立つことをおそれ、問題に正面から立ち向かって解決しようとしないことがあると感じます。高齢化や高い失業率などに直面しているいま、おそれの気持ちから本当の平和を維持できなくなってはいけない。異なるバックグラウンドをもつ人々の意見が受け入れられる社会をつくることが、日本で必要とされていると思います。
─ Q2. 平和でない状況の原因をどう考えますか?
うまく機能していない各国の政府、フェア(公正)でもサスティナブル(持続可能)でもない貿易システム、貧困、人権、環境保護などの課題の緊急性を充分に反映しない政治のしくみが、貧困や社会不安をもたらしています。私はその現状を子どもたちに伝えています。自分のフェアトレードの仕事についても話しますが、子どもたちがこの世界での自分の責任や立ち位置について想像し、理解する手助けとなっているようです。
─ Q3. 子どもたちが平和のためにできることはありますか?
社会や環境に関する問題の解決に、自分たちがどんな役割を担っているかを話します。私の子どもたちは、フェアトレードやオーガニックコットンの服は買いますが、ファストファッション(大量生産し安価で販売するブランド)の服は買いません。そうした服は途上国の子どもがつくっていたり、大人でも低賃金で劣悪な環境でつくられていることがあると知っているからです。だから古着の店で買い物したり、着なくなった服を友だちと交換して楽しんでいます。
ピープル・ツリー
15の途上国の50以上の生産者団体と提携し、衣類や食品などの商品を開発し適正価格で販売する。東京・自由が丘と銀座に直営店がある。商品はwebでも購入可能。
www.peopletree.co.jp
Safia Minney サフィア・ミニー 
ピープル・ツリー/グローバル・ヴィレッジ代表
1964年、英国生まれ。90年に夫の転勤にともない来日。環境や貧困問題についての情報を発信するNGO「グローバル・ヴィレッジ」を設立し、95年にフェアトレード部門を法人化。後に「ピープル・ツリー」をブランド名に。著書に『おしゃれなエコが世界を救う』(日経BP社)、『By Hand – 世界を変えるフェアトレード・ファッション』(幻冬舍ルネッサンス)。
※このインタビューは、マンモス19号「平和をつくろう!」(2009年9月発行)に掲載されています。
» What’s Peace?平和をつくろう!|Mammoth School