中原法子さんインタビュー My Mothering Style

無理せず、頑張り過ぎず、自分らしく—— 中原法子さんのママ・スタイルには、忙しい毎日の中でママ業を楽しむコツがたくさん隠されていました。中原法子さんは、3歳の男の子のママ(インタビュー当時)。仕事に育児に、超多忙な日々を送っているはずなのに、彼女の周りを流れる空気はとても穏やかで、そのリラックスした雰囲気に、逆にこちらが驚かされます。『baby mammoth』No.3 (2006年) に掲載された、「ママになってより素敵になった人」を迎え、自分なりのママ・スタイルを話してもらうインタビューの第二回です。
「子どもが生まれてしばらくして、自分の考え方を変えたんです。良い意味で、手を抜けるようになった。何でもパーフェクトを求めると、いっぱいいっぱいになっちゃうし、現実は、なかなか思い通りには行きませんから。自分がそうやって楽になることで余裕も生まれ、子どもにとってもいいんじゃないかな。1歳で保育園に預けるまでは、家で仕事を続けていたんです。赤ちゃんが寝ている間に仕事して、起きてもスリングで抱っこしながら。でもやっぱり無理があるし、赤ちゃんが泣けば中途半端なところで仕事もストップしなきゃいけない。育児と仕事の板挟みになっちゃって、つらかったですね。それで、これじゃいけないと思い、子どもが起きている時は一切仕事をしないって決めました。そうすると気分が軽くなって、今は、慣れたのか諦めたのか、仕事と子育ての両立だって、全然大変だと思わないんです」
子育てと仕事の両立が決して容易でないことは、誰でも想像できるだろう。しかも、中原さんの夫である中原慎一郎さんはプロダクト・デザイナーであり、自身のショップ数店を経営する多忙な人。つまり、家事や育児の多くは、中原さんの担当だ。そんな状況で、いくら仕事と家庭の線引きをクリアにしたからといって、少なくとも私の場合、「大変じゃない」なんて口が裂けても言えない。しかも中原さんは、育児における悩みもあまりないと言うから、そのメカニズムをぜひ教えてもらいたいところだ。
「小さな悩みならいくつかありますよ。例えば、息子がなかなかおしゃぶりを外せなかったこと。ある晩、無理矢理おしゃぶりを取り上げたら、翌日保育園で荒れたらしく、先生から『昨日何かありました?』って言われたんです(笑)。それで、あぁ、無理矢理はいけないなぁと反省しました。子どもにとって“その時”がくれば、自然と出来るようになるんだって。それから、息子がお友だちにすぐ手をあげちゃう時期があったんです。その時はさすがに、息子がそうなった理由は自分にあるのかもしれないと、結構落ち込みました。でも、『うちもそんな時期があったけど、そのうち直ったよ。みんなが一度は通る道だよ』と、相談したママ友に言われ、気持ちが軽くなりました。“見られて悪い育児はしてないんだから、大丈夫!”と、自分のスタイルに、少し自信が持てるようになったというか」
必死になって育児書をめくるよりも、同じ立場の身近な人に相談することは、問題解決の早道。実体験に基づいた、よりリアルな回答が期待出来るから。その意味でも、保育園のママ友は中原さんにとって大切な同志なのだ。
「私、出産前にマタニティ・スクールに行って、すごくショックを受けたんです。全部正しい方法でやらなきゃいけないと思うと、子育ては不安だらけになってしまうって。だから、詰め込み過ぎず頑張り過ぎず、自分なりの方法でやるのが一番」
あくまで自然に、世の中にあふれる情報に左右されることなく、今その時のありのままを受け入れる。それが、中原さんのリラックス・ママスタイルの秘訣かもしれない。
最後に、母親である自分は好きですか? と尋ねると、少し考えてから、「好きです。仕事においてもプライベートにおいても、新しい視点でものを見られるようになったし、母親をやるっていうのは、面白いですね」と笑顔で答えてくれた。
中原法子 なかはら・のりこ:CHIGOオーナー
ファッションブランドのパタンナーなどを経たのち、ランドスケーププロダクツの中原慎一郎氏と結婚。中原氏とともに、2005年8月、東京・広尾に子どものためのセレクトショップ「CHIGO」をオープンする。www.chigo.co.jp
※ この記事は『baby mammoth』No.3 (2006年) に掲載されています。
撮影…大森克己 取材・文…名古摩耶