平和は、私たちの心と精神から 生まれるもの|パトリック・チャムーソ

南アフリカのモザンビークに生まれ、アパルトヘイト(人種隔離政策)のもと幼少期を過ごし、十四年もの間、無実の罪で囚われながらも、南アフリカの平和のために闘いつづけたパトリック・チャムーソさん。2006年にアパルトヘイトと闘う彼の葛藤を描いた『輝く夜明けに向かって』がハリウッドで公開されると、世界にその名が知れ渡り、南アフリカのヒーローとなったパトリックさんですが、あくまで自分は「普通の人」だと言います。「私のヒーローはネルソン・マンデラ。彼には敵意や怒りがなく、同胞のために喜んで尽そうという原動力があります。私の場合、若いころに情熱を注いだサッカーから、人の世話をするということに情熱の矛先が変わっただけ。だから私はべつにヒーローじゃないんです」。そんなパトリックさんは現在、HIVの蔓延によって孤児となった子どもたちを支援するコミュニティ「トゥー・シスターズ」を運営し、彼らの将来のためにさまざまな活動をしています。
─ Q1. 平和について考えるようになったきっかけは?
南アフリカのアパルトヘイトのもとに抑圧された幼少時代を送ったこと、そして1980年に無実の罪で逮捕され、1994年に釈放されるまでの刑務所生活のなかで、平和とはなにか、国民の幸せはなにかを考えるようになりました。厳しい取り調べや拷問を受けながら、南アフリカの暴力とアパルトヘイトに終止符を打つため、平和のために闘うことを決意したのです。
─ Q2. 平和な世界をつくるためになにが必要だと考えますか?
平和は、私たちの心と精神のなかから生まれるもの。悪いことをしてしまったときは、それを素直に認め、必要ならば「ごめんなさい」と言って謝り、他人を許す心をもたなければなりません。「私」ではなく「私たち」という意識をもつことも大事だと思います。この世界をよりよい場所にするためには、人種や肌の色、信条や宗教にかかわらず、どんな人をもありのままに受けいれ、自分たちと同じ人間として平等に扱う心構えをしなければなりません。人を見た目で判断してはならないのです。
─ Q3. 今後、あなたが目指すものはなんでしょう?
この国に住む人々の成長を助け、健康的な生活と適切な教育を与えること、そして彼らの生活をもっと理解してほしい…そんな思いから「トゥー・シスターズ」を立ちあげましたが、最近では地元の多くの子どもたちが学校教育を受けられるようになりました。HIVに関する指導の効果も出ています。私の夢は、この施設がいつまでも成長と発展を続け、いまよりも平和な世の中になるよう、私のヴィジョンを共有できる次世代の存在を育てていくことです。
Patrick Chamusso パトリック・チャムーソ
1949年、南アフリカ生まれ。アパルトヘイトのもと、1980年、無実の罪で逮捕され捕虜となる。釈放後、1999年に慈善施設「Two Sisters」を設立。エイズの孤児を支援する施設として子どもたちのケアをおこなっている。2006年には彼の半生を描いた映画『輝く夜明けに向かって』が公開され話題となった。
www.twosisters.org.za
※このインタビューは、マンモス19号「平和をつくろう!」(2009年9月発行)に掲載されています。
» What’s Peace?平和をつくろう!|Mammoth School