Toshiya Kobayashi

ネイティブアメリカンに伝わる星の物語

北斗七星をキーワードにした星の物語。前回に続いて、今回はネイティブアメリカンに伝わるお話を紹介します。世界各地の星の物語は、広い大地のどこかで古代から同じ星空を人びとが眺めていたという、時間や場所を超えたつながりを感じさせてくれます。
─ むかしむかし、五匹の狼と末の弟の一匹のコヨーテがなかよくくらしていました。ある夜、狼の兄さんたちが空を見あげていました。コヨーテは、砂漠に散らばっている弓の矢をたくさん集めて、空に矢を射り、大地に届く長いはしごをつくりました。兄さんたちは一目散にそのはしごをのぼっていきました。コヨーテもいちばん最後からついていきました。はしごの向こうにいたのは、二頭の熊。ゆうかんな兄さんたちは、熊に向かって走っていきましたが、コヨーテはぶるぶるふるえ、とうとう一人ではしごをかけおりてしまいました。そのとき、熊がおりてこないようにと、矢を一本一本抜いていったのです。
さあ、たいへん。兄さんたちは空のまんなかに取り残されてしまいました。狼の兄さんたちは、いまも空の上、熊とにらみあっています。七つ星のふたつが熊、残りの五つが狼の兄さんたち。コヨーテは、ときどきさみしくなって、星にむかってウォーンとほえるのですが、やっぱり熊が恐いので、はしごはかけないんですって。やれやれ。
※お話は『mammoth No.11 家族で楽しむ星のてびき』収録の「北斗七星伝説」(文:寮美千子 画:小林敏也)より抜粋しています。