Photo: Machiko Fukuda

まねまねヨーガでこころをほぐそう

ペンギンにオットセイに三日月といった、いろんな動物やものを想像しながらポーズをとる“まねまねヨーガ”。親子で一緒に、いろんなものを想像しながら、まねしてポーズをとってみましょう。からだを動かして、からだがほぐれてくるとつられて、こころもやわらかくほぐれてきます。すると、からだもこころも、とっても気持ちいい!
こちらの「アニマルヨガワークシート」では、さまざまな動物をモチーフにしたヨガのポーズを紹介していますので、ぜひ親子で試してみてください。まずは写真をみながら、こんなポーズできる?これは何のポーズだと思う?と会話をしながら始めてみてくださいね。
ヨーガ療法士の伊藤華野さんがヨーガと保育の関わりについて語ってくれました(マンモス18号 インタビューより)。
自分のこころと出会おう
ちょっと意外に思うかもしれませんが、さあヨーガをしてみようというときに、子どもが違うポーズをとったり、ヨーガをしないでかけずりまわったりしていても、べつにかまいません。なぜなら、ヨーガ本来の目的は「意識化」だから。自分のこころとの出会いもそのひとつです。楽しいとかウキウキするとか、自分の気持ちや感覚に気がつくこと、それ自体がもうヨーガなんです。
子どもの発達には順序性があります。まず、感覚が芽生えます。そして、運動、情緒、言葉、社会性、知性と発達していきます。だからそもそも、子どもの感覚にいきなり知性で強制するのは不自然なこと。もし子どもがヨーガをやりたがらないなら、そうか、いまはやりたくないのね、ってわかってあげればそれでいい。親と子どものこうしたやりとりが、いのちの発育と発達にとても大切な空間になります。
まずは、親がヨーガを満喫することが大事。ぜひ自分の気持ちに向きあって、癒されてほしい。がんばりすぎているお母さんなら、そんなにがんばならくても、まあいいかぁって…。そうやって自分をゆるしてあげられるお母さんは、子どものこともゆるせるようになる。すると、子どもものびのびいきいき!
子どもはゆるされ自分に自信がもてるようになると、自分できちんと考えるようになります。すると、大好きなお母さんが悲しむことはしたくないと考え、自分の行動を制御しはじめます。それになんといっても、お母さんが楽しそうにヨーガをしているのを見れば、子どもはそれをまねしてみたくなるというものです。とにかく、親が好きで、いつだってもっと親に愛されたいのが子ども心。ヨーガで親子の愛を確認しあっていきましょう。
子どもにヨーガがいい理由
いのちの力を発見し、いのちの力とともにあり、いのちの力を育んでいく。いのちを大切にし、活性するのがヨーガです。考えてみるとこれは、保育と同じなんですね。だから、子どもにヨーガはとてもいいと考えているんです。
感覚に気づくという「意識化」がヨーガですが、ポーズはその気づきのきっかけとなる、いわば公式です。正しいポーズができないからダメというのではなくて、そのまま引き受けて楽しめるように促すのが大人の役目。一緒に試してみて、これ以上伸ばしたら痛い、ここまでなら気持ちがいい、なんていうふうに、ポーズにあてはまったり、あてはまらなかったりする自分を見つけてみましょう。刺激があるな、ちょっと痛いなというところでじっとしていると、不思議なことに痛みは消えて、からだは自然に伸びていきます。
こころもこれとまったく同じ。ヨーガをすると、自分のこころとの折りあいができるようになってきます。怒っているときや悲しいときでも、しっかりそのこころを観ると、そうした感情は不思議に消えてしまうのです。真実の自分のこころと出会えれば、いまやるべきことがわかってくる。たとえ自分は社会的に評価されないかもしれないけれど、自分は自分の花を咲かせればそれでいい。少なくとも私はそう思って生きています。
答えがでるまでに時間がかかりますから、ヨーガというのはまどろっこしいものでもあります。でも、自然の育みに時間が必要なのは当然。その代わり、いのちへのはたらきかけは、かならずこたえをくれるでしょう。からだは本当に正直です。
自分のこころに耳をすませるようになって、自分らしさを探して、反抗期を送り、アイデンティティを見つけだす。いずれやってくる思春期からのこのプロセスを乗り越える力をつけるためにも、乳幼児期のいまのうちに、いのちへの気づきをもたらすヨーガになじませたい。お母さんの視点も、そんなふうに切り替わると嬉しいなと思います。
 
プロフィール
伊藤華野(いとう かの) 本名、伊藤佐陽子。インド政府認定ヨーガ療法士、臨床心理士、保育士、介護福祉士の資格をもち、おもに子どもの健全育成を目的に、オリジナルな教育方法を考案し、活動している。京都西山短期大学専任講師、学生相談室主任。www.itokano.com