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星物語で地球観光ー朝鮮半島編

遠いとおい昔から、人びとは同じ星を見上げてきました。文化や暮らしは異なっていても、夜になると同じ星空が照らし、人びとを包んでくれます。世界各地で人びとは夜空に浮かぶ星を見ながら、何を考え、語ってきたのでしょうか。
マンモス11号の星特集では、作家の寮美千子さんが“北斗七星”をキーワードに、世界各地に伝わる物語を教えてくれました。ギリシア、朝鮮半島、中国、ウクライナ、アメリカ、それぞれに伝わる5つの星物語をシリーズでお伝えします。夜寝る前に、星空を眺めながら一編ずつ読んでみてはいかがでしょう。今回は、朝鮮半島編です。
むかしむかし、お金持ちが家をたてることになりました。村でいちばんという大工さんにたのんだのですが、大工さんは病気になり、その息子が作ることになりました。
とうとう、りっぱな家ができあがり、きょうはおひっこしの日です。えっちらおっちら、たんすを運びこんでみると、どうでしょう。どうしてもきっちりはいりません。なんと、壁も床もゆがんでいるのです。家は、ま四角ではなかったのでした。怒ったお金持ちのドラ息子は斧を持って、大工の息子を追いかけます。大事な息子が人殺しになってはたいへんと、お金持ちも重い腰をあげて、息子を追いかけました。
そんなわけで、空にはいまもひしゃげた家があって、逃げだした大工の息子を、お金持ちの息子が追いかけ、それをお金持ちが追いかけているのです。よくみれば、お金持ちの息子が持っている斧が、星のわきに、きらりと小さく光っていますよ。
マンモス11号掲載「北斗七星伝説」文:寮美千子 画:小林敏也(p.52-63)より抜粋