STORYTIME ストーリータイム 対談 青柳拓次 × 秋山花

2人のアーティストによって生みだされる、ことばと絵の世界「STORY TIME」。今回は、ミュージシャンでありながら、これまでにも何作かの絵本のストーリーを手掛けたことのある青柳拓次さんと、出産を経て絵本の作画にもフィールドを広げているイラストレーターの秋山花さんによって、雨の日が楽しみになるようなお話が完成しました。会うのはこれが初めてだったおふたりに、制作にまつわるエピソードについてお話していただきます。

秋山 花(以下、秋山):青柳さんは、お子さんに絵本の読み聞かせされていましたか?

青柳拓次(以下、青柳):うちは上の子が12歳、下の子が10歳の姉妹で、もう読み聞かせする年頃ではないんです。でも、彼女たちが小さい頃は、何百冊というくらいたくさん絵本を読みました。子育てと言っても、男親はそれくらいしかできることがなかったというか……。振り返ると、読み聞かせることで「親としてちゃんとやってるぞ」と思える実感を得ようとしていたのかもしれないですね(笑)。

秋山:でも、夜寝る前の読み聞かせは、静かに子どもと向き合える大事な時間ですよね。女の子だと、どんな内容のものを選ぶんですか?

青柳:絵のうつくしさは大事だなと思うのと、次に何が起こるんだろうって、高まりのある内容だと子どもたちが喜びますよね。でも、僕自身は抑揚のない物語も好きで。特に当時、気に入っていたのが『しずかなおはなし』というロシ アの詩人で児童文学作家のサムイル・マルシャークが手掛けた絵本で、読み聞かせながら自分もその時間にひたれるような、静かでいい作品でしたね。

秋山:じゃあ、流行りのギャグものなんかは選ばずに。

青柳:そうですね、あんまり盛り上げない方向で。なるべく早く寝てもらわないとなので……(笑)。

秋山:そういえば、今回のお話で言うと、青柳さんのお子さんは女の子なのに、主人公はティマくん、男の子でしたね。

青柳:確かに……! ひらめいたまま書いたので、そこはまったく意識してなかったです。

秋山:物語を考えるのに、何かインスピレーションはあったんですか?

青柳:今回は、「変身」というお題をもらったので、その言葉からわーっと浮かんできた感じでしたね。

秋山:音楽をつくるときと、感覚的には同じなんですか?

青柳:そうですね、基本的にあんまり考えないです(笑)。

秋山:いざ絵本の物語を書くとなると、子どもに気づきを与えるには……なんて、あれこれ考えたりする人だっていますよね。

青柳:教訓的なものやしつけのためのもの、絵本にはいろんな役割があると思うんですけど、自分の場合は感覚的で。これを誰かが読み聞かせるのか、ひとりで読むのかわからないけれども、その時間がいい時間になるといいなぁと。ただそれだけでした。

秋山:音楽の人らしいですね。ロジックよりも直感という。

青柳:僕の場合、いろんな条件をクリアしようと考えすぎると、頭が動かなくなってしまうんですよね。だから曲を作るのも、ものすごく早い。秋山さんはどうですか? 作画する上で何かきっかけになるものはありましたか?

秋山:はじめてお話を読ませてもらったとき、まず「雨の日」というのがいいなぁと。「雨の日曜日」という世界観に、どんどん惹きこまれていきました。まだお会いする前の段階だったので、私もいろんな想像をしてしまって。私自身、雨の日に家の中で絵を描いていると、雨音が集中力を高めてくれることがあるんです。青柳さんはミュージシャンだから、雨の日に家の中で聞こえる音も思 い浮かべていたのかな、と思ったりして。

青柳:雨の音もいいもんですよね。でも、残念ながら、そこまで考えていなかった……。男の子だと、晴れたらやっぱり外にでかけたくなるだろうし、家の中で遊ぶとなると雨の日かな、と。現実的に考えてました(笑)。

秋山:あと、逆に私の息子が、たぶん主人公のティマくんと同じくらいの年ごろなのかなと思って、描きながら重ね合わせたようなところもありました。

青柳:偶然とはいえ、それはよかった! ちなみに、お子さんは、絵本は好きですか?

秋山:今4歳なんですけど、文字が読めるようになり始めて、第二次絵本ブームが到来しているところなんです。今、一番気に入っているのが『エマおばあちゃん』という絵本で。

青柳:うんうん、知ってます。
秋山:子どもたちが巣立ってしまって、ひとり寂しい毎日を過ごしているおばあちゃんが、あることをきっかけに絵を描き始めるんですよね。それで最後には、家中が絵であふれてちっとも寂しくない、というオチなんですけど、この絵本に感化されて「僕もイーゼルがほしい」と言い出して。私の両親も絵を描くので、実家のイーゼルを借りてきてあげると、もう張り切って毎日絵を描いているんです。だからか、今回の仕上がった絵を机に置いていたら、ティマくんを指差して、「これ、僕だよね!」って言うんです(笑)。そうじゃないんだけどな……と思いながら、「うん、そうだね」って答えて。

青柳:いやいや、そうやって「僕のことだ」と思ってもらえるなんて、うれしいですよ。

秋山:でも子どもって、隅々までほんとうによく絵を見ていますよね。だから、ちょっとしたことでも、ごまかしが効かない。

青柳:大人は文字を追うのに集中してしまいがちですけど、文字がそこまで読めないと、別のことが見えてきたり、そこからさらに想像をふくらませたりするんでしょうね。

秋山:そう、つい最近の出来事なんですけど、私が描いている絵を見て、息子が「この人、怒ってるよね、悪い人だよね」って言うんです。そんな風に意図せず描いていたのが、言われてみれば怒っているように見えなくもないな……と思 って描き直したりして。

青柳:お子さんが、秋山さんの先生なんだ(笑)。

秋山:そう、厳しい先生なんです(笑)。

青柳拓次
1971年、東京生まれ。デビュー30周年を迎えるLittle CreaturesのVocal & Guitar。KAMA AINA名義でも活動する。2013年、体験型コンサートCircle Voiceを沖縄から始動。その活動を追ったドキュメント映画『ひびきあう せかい RESONANCE』が2020年公開予定。最新作は、ミュンヘンの楽団 HochzeitskapelleとKAMA AINAの共演盤『Wayfaring Suite』。

秋山 花
1984年、東京生まれ。イラストレーター。一児の母。書籍、広告、雑誌、Web、 パッケージ、CD、新聞等でイラストレーションを手がける。国内外の展示で作品を発表。2014年ニューヨークADC賞銀賞など、国内外での受賞多数。 著書に作品集『”IHATOV” FARMERS’ SONG』(2009年PLANCTON)など。 雑誌『暮しの手帖』表紙絵、雑誌『母の友』などで挿絵連載中

mammoth [マンモス] No.40 へんしん Issue

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...