ストーリータイム 対談|アン・サリー × 小池アミイゴ

音楽家がことばを紡ぎ、そのことばの世界を画家が絵で表現する「STORYTIME」。今回は、歌手のアン・サリーさんとイラストレーターの小池アミイゴさんにご登場いただきます。以前からお互いの存在を認め合ってきたおふたり。じつはこの対談が17年ぶりの再会となりました。そんなおふたりに絵本『ハナちゃんの森』 に込められた想いをうかがいました。
 
音楽家がことばを紡ぎ、そのことばの世界を画家が絵で表現する「STORYTIME」。今回は、歌手のアン・サリーさんとイラストレーターの小池アミイゴさんにご登場いただきます。以前からお互いの存在を認め合ってきたおふたり。じつはこの対談が17年ぶりの再会となりました。そんなおふたりに絵本『ハナちゃんの森』に込められた想いをうかがいました。

ーーー 企画依頼が届いたときの感想を教えてください。
アン・サリー(以下、A):「子どもを寝かせるときに電気がついているとなかなか寝ないので、部屋を暗くして、本を読まずに自分でお話をつくったりしていました。とんでもない展開があったりするんですけど、子どもたちはけっこう楽しく聞いてくれていて。自分でもお話をつくるのが好きだなとは思っていたんです。今回は、その延長線上でトライさせていただきました」

小池アミイゴ(以下、K):「基本的には仕事を断ることはないんですよね。僕にとって仕事を引き受けるというのはひとつの冒険なんです。イラストレーターという仕事は自分の内側から出てくるもので描くのではなくて、人と知り合ったり、人と出会ったりして、物語をいただく。たとえば、雑誌のちょっとしたコラムでもそうなのですが、自分の知らない世界に入っていくというおもしろさもあって。それが、今回は“アン・サリー”。それはやるだろう!って」

A:「私も今回絵を描いてくださるのがアミイゴさんだと聞いて、豪華だなぁって。そして何より再会の機会でもありますしね」

K:「再会とおっしゃったけど、初めてお会いしたのは、もう17年も前。当時、青山のライブハウスでイベントをつくったとき、出演バンドのゲストとしてアンさんが来られて、ジョニ・ミッチェルを歌ったのを今でもはっきりと覚えています。そのときからずっと大好きで、無理をしなくても、いつかどこかで出会えるだろうと思っていたら、今回声がかかって。ライブにはこっそり行ってたんですけどね(笑)」

A:「私もアミイゴさんの作品は、いつも拝見していました」

ーーー どのようなことをイメージしながら制作されましたか。

A:「ハナちゃんは、じつは私っぽいんです。私は、モヤモヤしていると森のなかへひとりでよく歩きにいくんです。モヤモヤしているときにさっぱりする方法のひとつが森のなかを歩くこと。帰ってくるころには、さっきのモヤモヤはなんだったんだろうってなる。森のなかにいて、ただ歩いているだけで気分が回復する。森からエネルギーをもらっているのかもしれないし、ただただ歩くという行動でエネルギーが自分のなかから湧いてくるという経験をしているんですね。目には見えないことなんだけど、物語に出てきたおばあちゃんを自分が求めているところがあって、漠然と自分のなかにあるものをどういうふうにしようかと思って書いたのがこのお話です。だから私自身のお話でもあります。おばあちゃんみたいな人や自分を潤してくれるような音楽をつねに求めていて、すごく憧れている。自分自身がそんな歌を発信する側になりたいって憧れがあって、おばあちゃんに自分を投影していて、こんな人がいたらいいなぁって。でも子育てをしていると、子どもたち自身が成長するなかで出てくる葛藤をみていて、完全に自分だけの物語ではないですね」

K:「はじめに物語を読んだとき、ハナちゃんはご自身のことだろうな、おばあちゃんはこうなりたいという存在だろうなと思いました。だけど、隣のベッドで寝ているお母さんの描写はなかった。これをどのように描けばいいか考えましたね。アンさんご自身は現在お母さんでもあるはずなんだけれど、リトル・サリーとオールド・サリーについては書いているのに、お母さんの部分が抜けているところがおもしろいなと思いました。そして、そこに行間があっていいなと思いました。絵本って、僕は子どものものだと思っていて、その抜けたところは読んであげるお母さんがいちばん演出できるところだなと思います。子どもとおばあちゃんとの間に、お母さんという広大な森がある。僕が描くべきところは、ことばになっていない“そこ”だなと思いました」

A:「自分が書いたけれど、みなさんがこの物語をどんなふうに読むかを想像することはおもしろいですね。その人その人の読みかたがあるんですよね、きっと」K:「今回は、歌を歌う音楽家でもあるアンさんが書いたことばが音符だとしたら、行間である休符の部分を紡いでいく感じ。そして、ひとつの音楽にしていくイメージですかね。簡単にハーモニーというよりも、トントントンと置かれた音符の間に見える風景を僕が描くのかなと思います」

A:「たしかに、歌も歌うときに説明が多すぎないほうがいいなと思っていて。声を発してしまったあとは、野となれ山となれじゃないですけど、どういうふうに解釈するかはご自由に、と。声が放つ説明しようのない色彩みたいなところが、今回はアミイゴさんの絵になるのかなと思います」

K:「僕が好きな音楽もそういうもの。アドレナリンをガンガン出す音楽も嫌いじゃないけど、ふわーと包まれるような音楽が好き。そんななかで、今日は気持ちが沈んでいるからこのグレーに惹かれるとか、嬉しい気分だからピンクに惹かれるとか、たくさんの幅をもったものをこの物語に感じてもらえたら」

ーーー 読者の方にメッセージをお願いします。

A:「最後のページに、ハナちゃんがお母さんに抱っこされてほっとしてというシーンがあります。私はいつも子どもたちを抱っこすると、自分がほっとするんです。じつはこのお母さんもハナちゃんを抱っこすることで、ハナちゃんが森に何かを求めなきゃいけないような心の要素があったところを解消しているようで、自分のもとに帰ってきてくれるという安心感もあるんじゃないかな」

K:「結局、お母さんこそ森のような存在だったということですね」

A:「ハナちゃんが求めていた森が、こんなに近くにあったって気づいたってことでしょうか。最後にお母さんが森になっているというのは、読んでいるお母さんにもほっとしてもらえるかもしれませんね」

K:「絵本を読むことは子どもとの会話。慌ただしい1日のなかで優しい声で絵本を読んで、ゆっくりとした時間を過ごすチャンスでもあるんです。それと、僕は絵本はやっぱりことばが美しくなければいけないと思っています。今回は、すばらしい音楽家であるアン・サリーさんが書いた物語。お子さんと一緒に森のなかでたくさん遊んであげて、きれいなことばで読んでもらえたらと思います」

アン・サリー
歌手、医師。2001年「Voyage」でアルバムデビュー。2003年「Day Dream」「MoonDance」、待望の最新CD「Bon Temps」を含む、多数アルバムを発表。 CMや映画の主題歌を歌唱し、日本全国、アジア地域で演奏活動を行う。 暮らしのなかで緩やかに芽吹いた日々の想いは、ほころぶ花のように芳醇な 歌声と、花蜜の抽出された名曲群へと昇華され、幅広い層に届けられている。

小池アミイゴ
イラストレーター。1962年、群馬県生まれ、セツモードセミナーで絵と生きかたを学ぶ。1988年よりフリーのイラストレーターとしての活動をスタ ート。CDジャケットや書籍、雑誌などにイラストを描く傍ら、日本の各地 で暮らす人と共に、ライブイベントやワークショップを企画開催している。 著書に絵本『とうだい』(福音館書店)がある。

» mammoth [マンモス] No.37 こころ Issue

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