踊ることで自分のからだに目覚める|舞踊家・振付家 笠井叡

ジャンルにとらわれない活動を続ける舞踊家・振付家の笠井叡さん。『mammoth』DANCE特集では、笠井さんのインタビューを掲載しています。

– 冷めた言いかたをすると、からだというのは他者であって自分ではない。からだがおもしろくないと人生はおもしろくないのだから、人間にはからだそのものを知りたいという欲求がある。踊りは、ただ楽しいから踊るのではなく、自分のからだに目覚めていくという「気づき」があるからこそ踊る。それが生きる喜びにつながっている。

からだが望んでいることは、気づかれること。夫婦間において大切なのは、愛されているかどうかで、どんなにいい暮らしをしていても「私は愛されているのかしら」と気持ちが揺らぐと関係は崩壊してしまう。からだとの関係も同じこと。自分のからだとの関係性ができるから、踊っていると楽しくなる。まずは自分という他者との関係が出発点。自分との関係を楽しめて初めて、他人との関係も楽しめる。

これから先、コンピュータでできないことがますますなくなっていくなかで、絶対にコンピュータではできないこと、それは人間関係をつくること。まずひとりひとりが自分のからだと関係をつくり、次は友だち、次は恋人というように広げていって、ひとつの輪ができる。この人間関係の基本をつくるのは学問ではなくてダンスなのです。

もはやダンスは個人アートとしてだけでは成り立たず、社会をつくる「ソーシャルアート」へと変わりつつある。一般的に他者との関係性は言葉を使わないとできないけれど、ダンスのすごいところは言葉を介さなくてもできるということ。からだを動かすことで関係性を構築できるのです。-

笠井叡(かさい・あきら)
大野一雄、土方巽に出会い、舞踏家として活動開始。1979年、ドイツへ留学し、シュタイナーが提唱する運動を主体とする芸術「オイリュトミー」を学ぶ。若手育成に励むとともに、ジャンルにとらわれない活動を続ける。www.akirakasai.com

» mammoth no.29 DANCE Issue

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