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遠野の風景を感じる昔語り|正部家ミヤ(語り部)インタビュー

遠野の昔話は「昔あったずもな(むかしむかし)」で始まり「どんどはれ(おしまい)」で終わります。昔話を語っているときは、いつも側に父がいるような気持ちになります。物心ついたときから、囲炉裏端で父の膝の上で昔話を聞いてました。昔話を語っているときの、父の呼吸やぬくもりは、いまでも忘れませんね。だから、苦労して話を覚えたなんてことはなくって、頭んなか、体んなかに昔話が染みこんでいるんです。300くらいは語れるかしら、もっとあるかもわからない。

語りたいお話があったら、そのまんま覚えなくてもいいの。意味がわかったら自分が話せる言葉、地元の言葉で語りなさいと言います。全国共通語だとおもしろみがありません。自分の言葉で語ったときに、初めて人に伝わる語りができるのだと思います。

私の語りは、遠野の風景が見えてくる、と言われたことがありますが、とっても嬉しかった。それは落ち着いた雰囲気で話す、父の語り口です。それと遠野の方言にあると思います。方言は難しくて聞き取れないこともあるかもしれませんが、だいたいわかれば大丈夫。話の内容よりも、雰囲気や風景を味わってもらいたいですね。

私にとって昔話は、父なんです。昔話のなかに、愛情も父の声も魂も残っている気がするのね。私は昔話を語っているのではなく、父を語っているのだと思います。昔話は親子、心のふるさとをつなぐ愛情なのだと思います。どんどはれ。

正部家ミヤ しょうぶけ・みや 
岩手県遠野市在住の語り部。遠野の昔話の語り部として、姉の鈴木サツさん(故人)とともに全国を巡った。いまも公演を続け、その語りをまとめた『正部家ミヤ昔話集』などが出版されている。

この記事は『mammoth』No.23(ストーリーテラー特集)に掲載されています。

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