artwork: Philippe Weisbecker

愛・美・礼・和 和装の叡知|山中典士 装道家|JAPON interview 5

日本で古くから伝わる「きもの」には、先人のすばらしい叡知である「愛・美・礼・和」が潜んでいます。それを私は「装道」と名づけ、きものを装うことで礼から道へ高め、多くの人たちに究極の美しい心をもっていただけるよう普及活動をしています。
私がきものの世界に入ったのは、母の影響です。洋服なんて着ない時代でしたが、母は毎日きものを着ていました。優しく美しく優雅なたたずまいの母を私はとても尊敬していました。
日本は戦後、西洋文明が入り女性の服装は様変わりしました。そのとき、きものには現代人が失ってしまった礼や心があるのではないかと考えたのです。それを突きつめたら「愛・美・礼・和」という4つの言葉が出てきました、この4つの徳はひとつでも欠けると美しさが損なわれてしまいます。
装道を学ぶことは、ただきものを身につけるだけではなく、所作や立ち居振る舞いをすべて含めた「礼」を学ぶことにもつながります。
日本のすばらしい知恵の文化である装道は、海外でも高い評価を得ています。その際、各国の要人に和装女性の美しさの秘密を訊かれるのですが、私はこう答えています。「きものは洋服と違って経糸と緯糸で織られており、着る人の体型が表れません。体型を気にしなくていい代わりに、着る人の心が表れるのです」と。
私が母の和装に「美」を見出したように、未来を生きる子どもたちにも、「愛・美・礼・和」の心を伝えていきたいですね。
山中典士
やまなか・のりお 1928年、滋賀県生まれ。きもの学院、装道礼法学院を設立。毎年「きもの使節団」を海外に派遣(現在95カ国)、ローマ法王の謁見も受ける。社団法人日本きものコンサルタント協会会長。著書多数。http://www.n-yamanaka.com/
装道ネットキャンパス
きもの・礼法・マナー・年中行事・ことわざなどを、ネット上で楽しく学ぶことのできるオープンキャンパスです。
http://e-sodo.net/campus/index.html
※このインタビューは mammoth No.25「JAPON」特集に掲載されています。