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春を待ち望む「団子さし」

鯛、宝船、小判、大黒天など、縁起物をかたどったオーナメント。これは、福島・会津地方の初市で見つけた小正月のための飾りで、「団子さし」という行事で使われるものです。団子さしは、みずきや栃などの枝を山からとってきて、その「団子の木」と呼ばれる枝の一つ一つにまるめた団子をさすもの。こうした小物も一緒にぶら下げて飾ります。昔は大きな木にだんごをたくさん飾るために、家族みんなでだんごを丸めたそうです。まだ芽吹く前の枝に、花を咲かせ、実をつけさせて飾る。こうした風習は各地に残っていて、餅花、繭玉、稲の花などと呼ばれ、新年もたくさん稲が実るように、いい繭がとれるようにという願いをこめた予祝儀礼だといわれています。
山からとってきた木に家族みんなで飾り付けをする様子は、欧米のクリスマスツリーを思い起こさせます。クリスマスも、キリスト教が誕生するずっと以前から、春の訪れを祝う冬至のお祭りとしてのルーツを持っていました。住んでいる地域によって行事は変わっても、「春の訪れを楽しみに待つ」という気持ちに変わりはないのかもしれません。