STORYTIME|ストーリータイム 対談 原田郁子 × 川内倫子

音楽家がことばを紡ぎ、そのことばの世界を画家が絵で表現する「STORYTIME」。今回の作品は、音楽家の原田郁子さんと写真家の川内倫子さんによる、『いま』です。めぐりゆく季節を映した美しい写真と、おふたりが日頃から感じていることをことばにした共作です。おふたりの世界観をたっぷり感じる物語の制作裏話をうかがいました。

ー 編集部から依頼が届いたとき、どんな気持ちでしたか。
原田:クラムボンとしてデビューをしてから、絵本をつくりませんか?という依頼を何度かいただいたことがあるのですが、当時はとても自分が絵本をつくれる気がしなくて、お断りしていました。でも今回、少しは大人になったかな?ということもあり、ひとまずお話を聞いてみようと思ったんです。それで過去のマンモスを拝見していて、もう本当に直感としか言いようがないのですが、「写真とことばはどうだろう?」と思って、すぐに「倫子さんとご一緒できたら、すごくいいものができるんじゃないか」と思いました。
川内:ほかの方からの依頼でも引き受けていたとは思いますが、郁子さんと一緒につくれることが嬉しくて、前のめりに引き受けました。

ー どんなふうに制作が進んでいきましたか?
川内:まず最初に打ち合わせをしたときに、郁子さんからいくつかキーワードを聞きました。
原田:そうですね。イメージすることをいくつか話しました。最初にあがったのは、“季節”。以前、クラムボンの『ある鼓動』という曲のミュージックビデオでご一緒したとき、倫子さんの映像と写真がめぐっていく季節を映していたので、きっとそういうものになるだろうなと。
川内:“季節を感じる”のほかにも、“人物はあまりでなくてもいい”や“子どもが何かをじっと見る感じ”などがありましたね。
原田:子どもって時間を気にせず何かをじっと見ていたりしますよね。倫子さんの写真にもそういうものを感じていたので、そんな話もしました。
川内:以前から、私の写真を見た人に“子どもの目線みたいだね”って言われたり、実際に自分が撮るときもそういう集中力で撮ったりしていることが多いから、わりと何を選んでもいいのかなって思いました。だから、キーワードを聞いてすぐにイメージができたし、選ぶのにまったく悩まなかった。打ち合わせの次の日には、自分のアーカイブのなかから20点くらい写真を選び終えて、郁子さんに送っていました。
原田:倫子さんから届いたメールを開いてみたら、写真が全部良くて、「わー、これ10ページにまとめなくちゃいけないんだ!まとめたくない!」と思いました (笑)。マンモスのバックナンバーにカラーコピーで写真を貼りつけてダミー本をつくって、何度も入れ替えたりしながら写真を絞っていきました。
川内:郁子さんが考えてくれたレイアウトをなるべく採用しつつ、この組み合わせならこっちのほうが合うかなとちょっとだけ調整しました。全ページに写真を入れる構成になっていたので、少し余白を取ったりして、思い切って写真を省いたところもありました。

ー ことばは、どのようにして生まれましたか?
原田:いただいた写真を“春 夏 秋 冬”のフォルダに分けて、それぞれの写真がどんな風に見えたらいいかな、自分ならどんな風に見たいかなというところから。送ってくれた写真のなかに、男の子が海辺にたたずんでいる写真があって、じつは『いま』というお話とはまったく別の、ある兄妹が主人公のお話をつくったんです。でも、文章のなかにある風景と写真に写っている風景がぶつかるというか、語りすぎちゃうなと思ってやめました。第一稿でもその男の子の写真は残していたのですが、倫子さんから写真を数点カットした案が届いて、 見た瞬間、「できたかも!すごい!」って感動しました。
川内:私なりのレイアウトを送ってみたら、郁子さんからできたかも!ってすぐに連絡がきて、私もできたね!って返事をして。2回ぐらいのキャッチボールでできちゃったんです。
原田:本当に早かったですよね。倫子さんが手を入れたことで全体がグッとしまったというか、“世界と彼女”っていうふうにお話が集約されたんだと思います。
川内:そのほうが見る方も入りやすいし、世界観がクリアになりましたね。

ー ふだんの作品づくりとはどのような違いがありましたか?
原田:うーん。違いについてはあまり感じなかったけど、はじめから子ども向けにつくろうとは考えていませんでした。甘い感じのものにはしたくなかった。
川内:すごくわかります。
原田:自分が小さいとき、子ども扱いされることにすごい抵抗感があったから、変に子どもを意識したものにするのはやめようと。文字がまだ読めない子でも、写真から何か感じ取ってくれたらいいし、いつか読んでくれたらいい。
川内:郁子さんが書いた『いま』は、私がふだん思っていることを違和感なく物語にしてくれているというか、自分が作品をつくるときにつねに思っていることを文章化してくれているようなところがありましたね。肩の力を抜いて、何も考えずにふだんやっているものを出せばいいって。ものすごく自然にできました。
原田:うん。でも、そういうことって、なかなかない気がします。
川内:そうかもね。
原田:私もお話ができ上がったときに、自分でも驚くほどにスッと浸透していきました。倫子さんの写真を見ていて思ったこと、自分がずっと思ってきたことを引き出してもらったというか。
川内:自然にことばじゃない部分でキャッチボールをしていたのかな。

ー『いま』を読む親子に向けてのメッセージがあれば、教えてください。
川内:お子さんと一緒に手に取ってもらって、四季の移り変わりやいま生きている時間の流れなどについて話し合ってもらえたらいいですね。
原田:ふだんの生活のなかで、何かをじっと見続ける時間ってなかなかないと思 います。お父さんもお母さんも忙しいだろうし。子どもと一緒に読むのももちろんいいけど、子どもが飽きてこの本がそのへんにぽいっと置いてあったら、あとで手に取ってお父さんやお母さんにもゆっくり見てもらえたら嬉しいです。

原田郁子
1975年、福岡県生まれ。1995年にバンド「クラムボン」を結成。歌と鍵盤を担当。バンド活動と並行して、さまざまなミュージシャンとの共演やソロ活動も精力的に行っており、4枚のソロアルバムを発表。2010年、吉祥寺の多目的スペース&カフェ『キチム』の立ち上げに携わる。

川内倫子
1972年、滋賀県生まれ。写真家。2002年、『うたたね』『花火』で第27回木村伊兵衛写真賞受賞。2009年に第25回ICPインフィニティ・アワード芸術部門を受賞するなど、国際的にも高い評価を受け、国内外で数多くの展覧会を行う。著作に写真絵本『はじまりのひ』(2018年)、作品集『Halo』(2017年)など多数。

mammoth [マンモス] No.39 PHOTO Issue

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