STORYTIME クロストーク|UA × 近藤亜樹

音楽家がことばを紡ぎ、そのことばの世界を画家が絵で表現する「STORYTIME」。歌手のUAさんと、画家の近藤亜樹さんによるコラボレーション作品今回は、カナダの島で暮らす歌手のUAさんと小豆島に移住した画家の近藤亜樹さんによるコラボレーション作品です。ともに島で暮らすおふたりの、海を越えた交流から生まれた『たわちゃん』。その制作秘話をうかがいました。

ーーー 企画依頼が届いたときの感想を教えてください。

UA(以下、U):「前々から絵本を書いてみたいと思っていたのですが、意外に機会がなく時が過ぎていました。もっと詩に近いものでもよかったのでしょうが、私としては断然「お話」を書いてみたかった。そして子どもはもちろん、大人にも感じてもらえるようなものにしたいと思いました」

近藤亜樹(以下、K):「誰かが生み出した作品をもう一度、絵で生み返してみたいという思いがありました。UAさんのことばには熱のような色彩が鮮やかに感じられ、素直にやってみたいと感じました」

ーーー どのようなことをイメージしながら執筆/制作されましたか?

U:「このお話はもともと、娘に聞かせたおやすみ前のストーリーテリング。本を読み聞かせする場合と、自分で物語を創りながら聞かせる場合がありますが、後者の方は、夢うつつながらも気分がのってるとき。なかでも記憶に残り印象的だったものが原案となっています。娘に話したときは、女の子は娘の名前でしたし、集めたももいろのかけらで、枯れた木を飾って蘇らせる、というオチでした。ちなみに“たわ”というのはうちの犬の名前。「たわわに実る」というときの「たわわ」は、枝がしなるほど、というような意味がありますが、「たわ」ともいうそうです。 たわちゃんは、千枚も集めたももいろのかけらを手放すとき、寂しいような嬉しいような、ことばにならない気持ちになって泣きます。けれど、たわちゃんは心の奥深くで知ります。海からもらった美しいものをまた海に返しただけだと。本当の宝物は、ももいろのかけらではなく、海のそのものだということも」

K:「最初にお話を聞いたとき、母なる大地というイメージが浮かびました。何かひとつの対象というより果てしなく大きなことが描かれた物語だと。祈り、母、大自然との共存、そしてピュアなたわちゃんを通して、ひとことではうまく語れないビッグマザーのような包み込む温かさがある。すばらしい宝物のような子どもの素直さ、そして周りで成長を見守るたわちゃんのお母さん、海がめ、たわちゃんの大好きな海に、大きな母性を感じます。すべてのものは母から生まれ、またどんな命も何かの子どもなんだなぁと強く感じる作品でした」

ーーー 『 たわちゃん』をはじめて聞いたときの感想を教えてください。

K:「UAさんの声で送られてきた神秘的なたわちゃんの物語を何度も何度も繰り返し聞いていると、母胎の中にいる子どものような気持ちになったり、反対に浦島太郎のような、老人の気持ちになったり、この世のものであるような、この世のものではないような神事のような、シャーマン的なものを感じました。聞くたびに、より深くたわちゃんの見た世界に潜っていく感覚がありました」

ーーー 近藤さんの絵を見た感想を教えてください。

U:「とても感動しました! 特に、お母さんの手がたわちゃんの手や頰を包む表現には心が洗われます。シンプルで説明しすぎず、読む側に想像させる余裕もあり、すばらしいと思います。 事前に近藤さんの作品はいくつか拝見しましたが、抽象的な作品が多かったので、今回はどんな表現になるのか興味津々でした。 さらには、私のイメージ通りで、飛び上がりそうになるくらい嬉しかったです!」

ーーー 執筆中、また制作中に苦労された部分はありましたか?

U:「“海”以外は、ひらがな表記にしたので、ことばとことばの空白のとり方について少し考えさせられました。結局、自分の呼吸に合わせるような空白のとり方にしましたが、これが正解ということではないわけです。読む方によっては、読みづらいこともあるのだろうと思います。しかし考えすぎてもかえってぎこちなくなるのかもと思い、適度にゆるく考えることにしました。 日本語は奥が深いですよね」

K:「最後まで苦戦したことは、筆をはしらせてもたわちゃんの服のイメージがまったく思い浮かばなかったこと! 結局大きくなるまでは服を描きませんでした」

ーーー 歌詞を書くことと、物語を執筆することに、違いはありましたか?

U:「ハートに湧き起こる、作品に込めたソウルは変わらないのですが、方法はまるで違うと思います。また歌詞の場合、ナラティブなものはあまり書きません。メロディが先にあって歌詞を書くことが私は多いので、歌詞を書くときは、まず、その音から感じる光景や五感をイメージするところから始めます。それをことばにしていくわけですが、今回は、娘に話したときに物語がすでにでき上っていたので、それを清書していくような感じでした」

ーーー 普段の制作とはどのような違いがありましたか?

K:「一人で生んだものはいくつもの記憶の道を通って作品が生まれてきますが、結局は自分フィルターのみです。それがある種の個性なのですが、今回のように生みの親、育ての親と、ふたつのフィルターを通して生まれてくる作品はまったく別物だと思います。とても新鮮で楽しかったです」

ーーー 読者の方にメッセージをお願いします。

K:「ももいろのかけらを千枚も集めたたわちゃんは本当にすごいなと思いますが、私たちの何気ない日常の中にもきっとそれぞれのももいろのかけらが落ちていて、気づいたら千枚たまっていた、なんてこともあるのかなと思いました。親子で一緒に過ごした時間は何にも代えがたく、子どもの成長と親の成長、そこにある愛は、海がめの赤ちゃんが千匹産まれるくらいの奇跡があるのかなと思います。何かひとつを信じて頑張ることは、いつのまにか素敵な奇跡につながるのかもしれません」

U:「私も現在三人の子育て中で、自分の時間が欲しくなり、どうしたものかと考えさせられます。けれど、たとえ一日のうちたった数分でも、親子が心の通うような体験…… 特別なことでなくても、たとえばお話や空想など、買った物に頼らずつくり出せる何かによって、ハートのうるおうような温度のある時間があれば十分なのかもしれません。『たわちゃん』を気に入ってくださる親子さんなら、ぜひ次は一緒にお話づくりをしてみてください。それが難しいようなら、“たわちゃん”をお子さんのお名前に替えて話すだけでも楽しいかもしれません」

UA
歌手。1972年、大阪府生まれ。UAとはスワヒリ語で「花」という意味を持つ言葉。1995年、ビクタースピードスターレーベルよりシングル「HORIZON」でデビュー。当時から、その個性的なルックスと存在感のある歌声で注目を集める。2005年より都会を離れ、田舎で農的暮らしを実践しつつ、環境問題や平和を願う活動にも力を注いでいる。

近藤亜樹
画家。1987年、北海道生まれ。東北芸術工科大学を卒業後、国内外の展覧会に多数参加。躍動感あふれる筆遣いと力強い色彩の作品とともに、油絵アニメーションと実写による短編映画「HIKARI」や、パークホテル東京の客室に描いた「おたふくルーム」の制作、音楽家とのライブペインティングなど、形式にとらわれない作品発表やパフォーマンスで注目される。

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