手を当ててみて 言葉ではなく体の声を聞く|整体ボディワーカー・山上亮|HANDS Interview

『mammoth』no.32の特集は「HANDS/手」。本誌の巻頭インタビューでは、整体ボディワーカー・山上亮さんにお話を伺いました。整体を通して感じる手の力とは?
— 「子どもにどう接していいのかわからない」。こんな言葉をよく聞きます。そういうとき、私は「まずはとにかく手を当ててあげてください」と言うのです。
私は野口整体とシュタイナーの考えかたを元に整体を行っており、「手当て」もそのひとつ。とはいっても何か特別なことをするわけではなく、ただ、手を当てるのです。たとえば、お腹がいっぱいになったら、自然と手がお腹をさすります。頭がぼんやりするときには、こめかみに手を当てます。不安なときに誰かの手を握るとホッとする。“本能的”に手を当てて癒す。その考えかたがベースになっています。
いつからか現代の日本は、体よりも言葉でのコミュニケーションが中心になってしまいました。でも、体には言葉で理解できないたくさんの情報が潜んでいます。手から得られる感覚をもっと信用してほしいな、と思います。お子さんが具合いが悪そうにしているとき、どうしたらいいのかわからない、と慌ててパソコンで検索。そうではありませんよね。まずパッと手が出るのが本能ではないでしょうか。子どもの顔を見て、手を当てたり、抱きしめたりしてあげてください。それで解決できなかったら調べたり、病院に行ったりすればよいのです。自分の体の反応に、もっと素直になってあげてください。
教育の根本は模倣です。意識をして言葉で教えることではなく、子どもには無意識のしぐさや身振りが伝わってしまいます。頭で考えすぎず、手を使って、体から発せられるメッセージに耳を傾けてみてはいかがでしょうか。–
山上亮(やまかみ・りょう)
野口整体とシュタイナー思想の観点から、人が元気に暮らしていける「身体技法」と「生活様式」を研究。整体個人指導、子育て講座、精神障害者のボディワークなどを行う。
※このインタビューは mammoth No.32「HANDS」特集に掲載されています。