(c) Yoshihiro Suda / Courtesy of Gallery Koyanagi

草花は彫るたびに新しい発見をくれる|須田悦弘|マンモス花特集インタビュー

精巧な草花の木彫りを空間に設置するインスタレーション作品を発表している、アーティストの須田悦弘さん。木に彩色してつくられる草花は、本物と見分けがつかないほど。写真の《バラ》は、2013年エルミタージュ美術館での展示風景(ロシア、サンクトペテルスブルク)。『mammoth』花特集では、須田さんのインタビューを掲載しています。
「木彫りを始めたのは美大の1年生のとき。立体造形の授業で本物の魚の干物を題材にリアルに彫って色をつけてくるという模刻の課題が出たんです。それで数百円の安い彫刻刀を買って木を彫りだしたら、予想外におもしろくて、彫りつづけています。
植物をモチーフにしはじめたのは、大学3年生のときになんとなく買ったチューリップを彫ったのがきっかけ。植物はこの世の中にわからないくらい種類があるので、興味が尽きません。買ってきた花や道端の雑草をよく見ていると惹かれるところがかならずあるんですよ。何度も描いたり彫ったりしていると、一度めでは表現できなかった花びらの曲線や花芯の構造などを、二度めはできるようになったり、それまでは気づかなかった細部を発見できたりするので、同じ種類の植物でも何度も彫りますね。高山植物とかジャングルの花といっためずらしい花には興味がなくて、ふつうに目にできるリアルな花、ツバキやバラ、ユリ、チューリップ、モクレン、アサガオなどが好きです。植物を彫りつづけているのは、単純に花が好きで、興味も対象も尽きないからなんです。
彫るときは自分で撮りためた植物の写真や図鑑を参考にしています。花びらはこの写真から、雄しべは傾げかたがいいからこの図鑑からと、同じ種類の植物のいろいろな写真を自分の頭のなかで寄せ集めてひとつの形にします。だから写実的に表現しているんですが、彫刻とまったく同じ花はないんですね。」
須田悦弘(すだ・よしひろ)
1969年、山梨県生まれ。本物と見分けがつかないほど精巧な草花の木彫りを空間に設置するインスタレーション作品を発表してきた。1993年初の個展「銀座雑草論」を開いた後、世界各地の美術館などで個展を開催。
※ このインタビューは、mammoth no.28 FLOWER号に掲載されています。